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私の宝物

今回は、オリジナルのSSとなっています。
テーマは「時計」です。
表現が上手くできていたら嬉しいです。

それでは「私の宝物」はじまります。


二人がどんなに離れていようと同じ時間を刻めるようにと。
彼とお揃いで買った懐中時計が私の宝物。

私はソファーに寝転がりながら懐中時計を眺める。
蓋を開いた懐中時計から流れるカチカチという音が、私の心を彼との思い出で満たしていく。

彼が仕事で海外に行った一年前。
あの時の私は寂しさから、ただ必死に彼を引き止めようとするばかりだった。
そんな私に彼は言ったのだ。
「これから色々な事があると思う。だから…そんな時こそ一緒に買った懐中時計を見てくれ」
「そこに君の思いを込めれば…同じ時計を持っている俺に届くから」

今思えば、そんな事が起こるわけ無いのに。
それでも彼の言葉は、私の胸の中にストンと落ちて広がっていったのだ。
だから私は何かある度に、この懐中時計を見て、針の音を聴いて落ち着くのだ。
彼の鼓動のような時計の針の音が、私に話しかけてくれているような気がするから…。

そして今日は彼と一年ぶりに再開する日。
私は連絡が会った日からずっとドキドキしている。
電話や手紙で彼と連絡は取っていた。…けど、彼に会えると思う事、それだけで…私の胸は高鳴る。
きっと今の私の顔はにやけているに決まっている。いや絶対にそうだ。
そんな思いに耽っていると、気づけば約束の時間の一時間前。
そろそろ家を出なくては。
ソファーから身を起こし、あらかじめ準備しておいた鞄を手に取る。
懐中時計は懐のポケットへしまう。
もう一度、鏡の前へ行き身だしなみを整える。これで準備完了!
最後に戸締りをして、私は家を出た。

空港に着いた私は彼の場所まで走る。
渋滞に嵌ってしまって、約束の時間よりも遅れてしまった。
彼は怒っていないだろうか? 呆れていないだろうか?
そんな焦りを抱えながら私は目的地を目指す。

約束の場所に彼はいなかった。
時間は30分も過ぎてしまった。
彼は怒って帰ってしまったのだろうか? 不安が私の胸を満たした。
その時。
私の視界が突然真っ暗になった。
えっ? なに…これ!?
パニックになる私の耳に何かが近づけられる。
恐怖が先立ったが、そこから聴こえてきたのは聴き慣れた音。
カチカチ、カチカチ。
あぁ…この音は彼の……。
私は力づくで視界を塞いでいた手を払い、後ろを振り向く。
そして目の前にいる彼よりも早く第一声をかける。
「おかえりなさい!!」
彼はキョトンとした後、はにかんだ顔でこう言ってくれる。
「ただいまっ!」
と。

離れ離れになっていた二つの懐中時計が、また同じ時を刻み始めた―――。

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